ドライアイは、様々な要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがある（２０１６年、ドライアイ研究会）と専門的に定義されますが、眼が疲れやすい、何となく眼に不快感がある、眼に乾燥感がある、重たい感じがする、光を見るとまぶしい、眼が痛い、かすんで見える、目やにが出る、眼がゴロゴロする、涙が出る、ところが入浴時にこういった症状が軽減するなどのように一見、眼精疲労や結膜炎のように思われる症状をお持ちの方の中にドライアイの方がいらっしゃいます。また、レーシック（LASIK）後にドライアイ症状が強まる方が多くいらっしゃいます。更に、コンタクトレンズの種類によって、乾燥の度合いはかなり変わります。

私たちは、リラックスしているときには、約3秒に1回のまばたきをしていますが、パソコンなどを凝視しているときなどには1/4にまばたきは減少し知らぬ間に、眼の表面は乾燥状態に陥ってしまいます。
VDT作業者¹⁾の30％以上にドライアイ確定例の方がいらしたとの報告もあります。
ドライアイもまさに現代病の1つなのです。
VDT作業者のドライアイは、まばたきの減少による涙の蒸発亢進が主な原因で、女性、コンタクトレンズ装用者に更に発症しやすいようです。
また、近年の研究で眼を開き続けていることで、乱視が増えたり、視力低下が生じたりすることがわかってきました。

• 1)VDT作業とは、ディスプレイ、キーボード等により構成されるVDT（Visual　Display　Terminals ）機器を使用して、データの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業をいいます。

眼の表面をおおっている涙は、外側から順に、油層（水分の蒸発を防ぎ、角膜上の涙液を安定化する役割）、液層（眼の表面のうるおいを保つと共に角膜上皮細胞に必要な物質を供給する水分と、水分をゲル化して水分蒸発を防ぎ薄く均一に分布させると共に潤滑剤として摩擦抵抗を抑える分泌型ムチンより形成される）の2層構造を成しています。

• Ⅰ.涙（水分）の分泌が少ない方の治療
  ドライアイの性質に応じ、人工涙液という涙の成分と似た目薬や、水分をとどめておくためにヒアルロン酸の入った目薬をつけていただきますが、重症度があがるにつれ、防腐剤の添加がないものを使用いたします。涙の中には、角膜上皮細胞の分化、分裂に必要な様々な物質が含まれています。そのため、重症のドライアイの方には、少しでも本人の涙を眼に溜めておくために、涙点（涙を眼の外に排出するための出口）をシリコン製の涙点プラグで塞いでしまう場合もあります。また、涙の乾きを抑える保護用眼鏡の装用をしていただくこともあります。
• Ⅱ.涙（水分）の分泌以外が原因の方の治療
  • 1.ムチンの分泌・分布が悪い場合
    ムチンの分泌促進をする点眼をしていただきます。
  • 2.マイボーム腺機能不全が原因の場合
    まぶたの縁にはマイボーム腺という油の分泌腺があり涙腺から出た涙（水分）の上に油の膜を作り水分の蒸発を防いでいますが、油の分泌が低下または異常な分泌がされる状態をマイボーム腺機能不全といいます。油の分泌が低下している場合には分泌促進のためのマッサージや点眼治療、油分の補給のための点眼治療などをしていただきます。
    異常な分泌がされている場合には、消炎のための点眼治療、瞼の縁を清潔にするためのクリーニングなどをしていただきます。
  • 3.結膜弛緩症が原因の場合
    加齢で生じた結膜のたるみにより涙の入れ替わりが悪化し、炎症が生じ、まばたきによる涙の正常な分布が障害されてしまいます。
    この場合には、点眼治療の他、必要により、弛んで余分になった結膜を切除することもあります。
  • 4.コンタクトレンズが乾燥の原因と考えられる場合
    コンタクトレンズの種類を見直す場合もあります。

眼瞼痙攣（まばたきが自分の思い通りに出来ない）によりドライアイと似た症状が出ることがあります。
ボトックス注射による治療を要します。注射をするには、指定の講習を受けていることが必要ですが、当院では院長は講習を受けており、以前から実施をしております。

ドライアイでは様々な要因が絡み合っていることが多く見受けられます。
原因を突き止め、重症度を判断した上で適切な治療を行う必要があります。
市販の点眼薬だけでは症状が改善しない方、いろいろな点眼を試しても改善しない方、ぜひ当院で検査、治療をしてみませんか。